ヤクザと執事と私【短編】『遥か遠くのロシアにて-嵐を呼ぶ男達-』
龍一は、後ろの真木ヒナタに振り返り、苦笑いを浮かべる。
「・・・負けたのか?」
ブラックジャックを知らない真木ヒナタが聞く。
「はい・・・残念ながら。21に近づいた方が勝ち、ただし、21は超えてはいけないんですよ。」
「・・・ふ~ん。意外と簡単なルールだな。」
「やってみますか?」
「・・・いや、俺はいいよ。」
「でも、見てるだけでは、暇でしょう?」
「う~ん・・・俺は、あの機械が気になるんだけど?」
真木ヒナタは、スロットを指差す。
「そうですか。それでは、やってみてはいかがですか?コインを入れて、レバーを引くだけですので。」
龍一は、バックから数枚の札を取り出し、真木ヒナタに渡す。
「・・・うん。やってみる。」
真木ヒナタは、龍一からお札を受け取った。
「それを、あそこの両替機でコインに替えてくださいね。」
真木ヒナタは、龍一の言葉にうなずくと、走って両替機に向う。
「それでは、私も本格的に勝負しましょうか。」
真木ヒナタが、走っていくのを見送った龍一の目が不敵に光っていた。