ヤクザと執事と私【短編】『遥か遠くのロシアにて-嵐を呼ぶ男達-』
大和は、手持ちの札束を使い果たし、龍一を探して、カジノ内を歩いていた。
「まったく、どこにいるんだよ?・・・・・あ、いた。」
龍一の姿を見つけた大和は、走って龍一の元に行く。
「おい、龍一、金くれ。」
「・・・・大和・・・あなた、最初に札束2つ渡しましたよね?」
「なくなった。」
悪びれることもなく、はっきりと言い切る大和。
「・・・まったく、まだカジノに到着してから1時間しか経っていませんよ?どうやれば、1時間であの札束を使いきれるのですか?」
「それがさぁ~、聞いてくれよ。・・・俺と飲んでいたバニーちゃんさぁ~、何か、地元に病気の母親を残して出稼ぎに来てるらしくて・・・俺、かわいそうになっちゃってさ。・・・札束あげちゃった。」
何故か自慢げに語る大和。
「・・・あなた、その話・・・信じたんですか?」
「・・・どういう意味?・・・・・え・・・まさか、嘘なの?」
「・・・・それでは、もう一度、バーに戻ってごらんなさい。もう、そのバニーはいませんよ。」
「何言ってんだよ、龍一。そんなわけ無いじゃん。」
大和は、笑顔でバーへと走って戻っていく。