ヤクザと執事と私【短編】『遥か遠くのロシアにて-嵐を呼ぶ男達-』
「サンキュウ、龍一。・・・ところで、やけに龍一の前にコインがつんであるんだけど?」
席についている龍一の前には、コインが山のように積んであった。
「当然です。私は、どんな勝負でも勝ちますから。」
驚くことではありませんよと表情で語る龍一。
「・・・ふ~ん・・・まぁ・・・あんまり、無理しないように頑張れよ。」
興味なさそうな大和は、龍一に適当なことを言ってバーへ戻っていった。
「・・・あれだけカジノって言っていたのは、ギャンブルがしたいのではなく、バニーガール目当てでしたか・・・」
あきれた表情になる龍一。
「お客様、相当勝たれていらっしゃるようですが、よろしければVIPルームで高額なギャンブルなどいかがですか?」
龍一の後ろから、黒服の男が話しかけてきた。
「・・・いいでしょう。それにしても、私に勝負を挑んでくるとは、いい度胸のカジノですね。」
龍一は、長い黒髪をかきあげながら、微笑む。
その様子は、いつもの龍一とは明らかに変わってきていた。
そう、それは、まるで血を見て興奮する獣の表情だった。