ヤクザと執事と私【短編】『遥か遠くのロシアにて-嵐を呼ぶ男達-』
第5節:一文無し
「お客様、お帰りはあちらです。」
ディーラーが、VIPルームの部屋の出口を指し示す。
しかし、龍一は、その指示には従わず、立ち上がるとディーラーに言った。
「・・・イカサマですね。」
龍一の表情は、不敵に笑ったまま。
「お客様、負けたからといって、こちらにクレームをつけられても困ります。・・・お前達、お客様を出口までご案内しろ。」
ディーラーが声をかけると、10数人の屈強な男達が龍一、大和、真木ヒナタに近づいてきた。
「これは・・・さすがにまずくないか?」
真木ヒナタが、龍一と大和を見る。
普通の人が10数人なら、この3人をもってすれば、難なく打ちのめすことが出来るが、今回の相手は明らかにプロ。
しかも、顔の傷から判断すると、軍隊崩れということは、すぐに見て取れた。
「・・・そうですね。・・・大和、あなた、確か何かのトラブルかと思ったって言ってましたよね?」
龍一が大和の方を見ずにたずねた。