ヤクザと執事と私【短編】『遥か遠くのロシアにて-嵐を呼ぶ男達-』
そして、VIPルームの中の消火器の白い煙が収まった後には、3人の姿は跡形もなく消えていた。
残っていたのは、倒れたディーラーと、そのディーラーに投げつけられたと思われる消火器だけだった。
暗闇に包まれた駅近くの建物の影。
男達のささやきが、静まり返った周辺に静かに響いていた。
「・・・で、どうする?」
「カジノとホテルは同じ経営でしたからね・・・ホテルにも戻れませんし・・・」
「だよな・・・」
「いくら残ってるんだよ?」
「私は、当然ゼロです。カードも何もかもすべて掛けましたから。」
一切悪びれる様子もなく、龍一が答えた。
「俺も、小銭しか持ってないぞ?」
真木ヒナタも困ったような表情になっている。