ヤクザと執事と私【短編】『遥か遠くのロシアにて-嵐を呼ぶ男達-』
「ふっふっふっ・・・」
「どうしました、大和?頭でも打ちましたか?」
不気味に笑う大和を龍一が見る。
「こういうこともあろうかと、逃げる時に俺がしっかりとパクって来たから安心だよ。」
自信満々の大和。
「大和・・・あなた、たまには役に立ちますね。ほめてあげますよ。」
珍しく大和を褒める龍一。
「さあ、俺にひざまずけ!下等な者どもよ!」
大和は、ポケットの中から、カジノで使われているコインを取り出した。
「・・・何ですか、それは?」
「これが何だと?見てわからんか!カジノのコインだよ!これを持って行けば、何と現金が手に入るのだ!ワッハッハッハ~!」
「・・・大和・・・そのコインを現金に換金できるのは、・・・・今、私達が暴れてきたカジノだけですよ。」
可哀相な物を見る目で大和を見る龍一。
「・・・まじ?・・・それじゃ、これは?」
「・・・ただのゴミでしかありません。」
3人の体にロシアの冷たい風が吹きつけてくる。
さらに、冷たいのは風だけでなく、3人の懐も極限にまで冷えていた。
「・・・これから、どうするんだよ・・・・」
真木ヒナタの心の奥からのつぶやきが、夜の街に冷たく響いていった。