恋、涙 …
とりあえず一真を家に上げて、私は聞いてみた。
やっぱり…
私の思った通りだった。
一真は、私に最後の別れを言いに来たらしい。
「俺…決めたんだ。遅いと思うけど、これからは美久の言った通りにする。」
「そう…」
いい人を見つけたのかと聞くと、一真は視線をあちこちに泳がせた。
頬も赤いし…
「でもよかった。これで一真は…間違った道、進まなくて済むね。」
「美久…色々迷惑かけて、本当に悪かった。」
確かに色々あった。
けど、一真はこうやって目を覚まして、真っ当な道を進もうとしてるし…
私はそれだけで嬉しい。
「一真には…私みたいにならないで欲しかった。でも、もう心配いらないわね?」
「あぁ…」
もう連絡はしない。
今まで、ありがとう。
別れの言葉。
一真なりの優しさ…
『さよなら』は、
言おうとはしなかった。
「一真…!」
「ん?」
最後に1つだけ…
「アンタなら大丈夫。もう戻って来ないでよ!!」
一真の背中にその言葉をぶつけると、一真は振り返らずに握り拳を空に掲げた。