恋、涙 …
『ほら…なんか喋りな。』
『…先生、助けて。』
葉月とは違う声。
恐怖の感情に染まった、聞き覚えのある涙声。
俺は驚きのあまり、その場に座り込んでしまった。
篠原だ…
間違いなかった─
『どう?信じた?』
「…返せよ。」
『えっ…?』
汚いぞ…葉月。
俺が思い通りにならないから、篠原を誘拐する?
それは最低を通り越して、卑劣な人間がすることだ。
「篠原を返せ!!!!」
怒りが込み上げてきて、俺はここが学校だということも忘れて叫んだ。
『あははは…カズ、そんなに怒らなくてもいいじゃん。篠原さんには何もしないよ?ただし…カズがこっちに来てくれれば、ね。』
俺の大声に動揺することもなく、葉月は淡々と現在位置を俺に告げた。
『待ってるね…じゃ。』
篠原…!
通話が切れた携帯を握り締め、俺は教室を飛び出した。