恋、涙 …
それにしても…
カズ、ものすごい剣幕だったな。
あんなに怒った姿なんて、私は見たことない…
『あの時』は、怒りよりも呆れが強かったから─
「んん……っ!」
昔を思い出していると、篠原さんが私に向かって何か言っているようだった。
涙をいっぱい溜めた目…
それは、私にはあるはずのない純粋さを感じさせた。
「なに?」
せっかくだから聞こうかと思い、私は彼女の口に貼ってあるガムテープを剥がしてあげた。
そして、知り合いの男どもには今は何もしないようにと命じた。
「…っ!先生を…これ以上、傷付けないで…下さい。」
傷付ける?
私がカズを…?
あぁ…そうか。
この子は知ってるんだ─
私とカズと恭平の間にあった『あの時』のことを…
「それは…無理ね。」