恋、涙 …
第10章
友 side kazuma
「やっと退院だね。」
それから数日後…
俺は予定よりも結構早く、退院の日を迎えた。
「まぁな…病人でいるのも、悪くなかったけど。」
元恋人に刺されたなんてことは学校側には言えず、表向きは体調を崩しただけということになっている。
明日は…学校行かないと。
冬休み中だけど─
「先生、準備出来た?」
早く行こうと言って、俺の腕を引っ張る希。
少し前、俺のことを『一真』と呼んだ希だが…
それはあの時だけで、以来一度も聞いていない。
俺はもう『希』と呼ぶことに慣れてしまったのに…
「そんなに急ぐなよ…」
「早く〜!!」
荷物をまとめ終わるとすぐに、俺は希に手首を掴まれて、引っ張られながら病室を出た。