恋、涙 …
曖昧に答えて、俺は天井に視線を移し、じっと見つめた。
抜け出したい…か。
本当どうなんだろうな?
「いい相手いないの?一真なら出来そうだけど。」
「…なにが?」
「本気で恋。私は仕事柄いろんな男を見てきてるけど、一真は遊び人に向いてない気がする…」
あり得ない…
そんなことが出来るならあの記憶を思い出すこともないし、ここに来ることもないだろう。
そして…
人間、特に『女』という生き物を恨むことも─
「俺は遊び人だぞ?」
「わかってる…けど、まだ後戻りは出来るはず。ちょっと考えてみなよ。ね?」
後戻り…
美久は出来ると言うが、俺には出来ると思えない。
本気で恋なんて…
誰か一人を愛すなんて…
俺は二度と出来ない。
俺にはもう…
人を愛す権利はない。