恋、涙 …
赤信号で車が止まる。
私は、さらっと言われたさっきの言葉に驚いて、固まったままの状態だった。
「あのな、希…人の目気にするなら、今も注意しろよ。」
そんな私に声をかけて、先生は後部座席に手を伸ばして、何かを取った。
「ほら……これ被れ。」
渡されたのは…
黒いキャップだった。
「え…あのっ、」
「いいから。今は休み中だし、生徒も出歩いてるかもしんないだろ?…それとも、俺のじゃ不満か?」
全然不満じゃない─
て言うか、先生のものを使えるなんて、嬉しい…
「…どう?」
キャップを被り、確認の為に先生に聞いてみる。
「ん〜…もうちょい深く。…よし、OK!いいか、着くまでそのまま被ってろ。ちょっと遠くまで行くから。」
ちょっと遠くまで?
初耳なんだけど…