恋、涙 …
俺はそう言うと、希の腕を掴んで無理矢理車から引っ張り出した。
「……………」
下を向いて、まだ俺の方を見ようとしない希。
「まさかな…」
陽翔先生、いたよ。
ここに、喜ばない奴が─
「よし…希、俺は決めたことはもう曲げない。それでも嫌だって言うか?」
「だって…」
女の扱いなんて、自分では慣れたつもりでいた。
でも…
まだ全然ダメだな。
偽りの関係では平気でも、いざ本命になると難しい。
て言うか、そもそも希をここへ連れて来たこと自体が間違いだったのかも…
最初から失敗かよ─
自分でも笑えてくる。
俺…こんな奴だっけ?
「…希、お前車の中で待ってろ。俺のセンスに任せると多分ヤバいけど…」
自分で引っ張り出しといてなんだが、俺はもう一度希を車の中へと戻す。
「もうこうなったら、お前の意見や文句は一切聞かない。…わかったな?」
希はやっと俺の方を見て、無言で小さく頷いた。