恋、涙 …
希が提案したのは、ここからそれほど遠くはない場所だった。
子供が遊ぶような遊具がわりとたくさんある広場だ。
「ここ…来たことあるのか?」
広場に着いて車から降りた後、希に聞いてみた。
「うん…昔、お母さんに連れられてよくここで遊んでたんだ。悠哉と初めて遊んだのもここなんだよ。」
冬だからなのか、人は全くいない静かな広場で、希は懐かしそうに遊具を触りながら答えた。
「…かーくん。」
「ん?」
「明日になったら…かーくんは遠くに行っちゃうの?私は…1人になっちゃうの?」
希の目に溜まった涙が、頬を伝い、地面に落ちて消えていく。
それは俺が今まで見た希の涙の中で、一番悲しい涙のように感じた。
俺は希の側に歩み寄り、そっと抱きしめた。
「…ごめん。俺にも…どうなるかはわからない。でも、お前を1人にすることは、可能性としてはある。」