恋、涙 …
聞き覚えのある声に振り返ると、ドアの側に篠原が立っていた。
鍵…かけ忘れた。
気付くのが遅かった。
「…まだ用あんのか?」
俺は敢えて篠原がなぜここにいるのかは聞かず、冷たく言い放った。
「あ…いや、別に。私、先生がここにいるのは知らなくて…今日は鍵、開いてたから─」
この学校は、屋上に生徒が入ることは禁止。
俺以外にも何人かいる管理係の先生たちが、常に屋上の鍵を施錠している。
だから…
普段は開いていない。
やってしまった─
「篠原、ここにいるのが他の先生に見つかったら怒られるぞ。早く出ろ。」
出来るだけ平然を装い、俺は篠原に言った。
でも、篠原は俺の忠告を聞かずに首を横に振った。
「先生は怒らないの…?」
篠原…
なぜ、俺に構う?
さっき突き放したのに─
「…別に。」
俺みたいな奴に構って、篠原は何が楽しいのか…
篠原は俺の側まで来ると、少し間をあけて座った。