恋、涙 …
部活に戻れと言ったのに…
まさか、篠原はずっと俺について来てたとか?
「私は…今までずっと、先生は嘘を付くような人じゃないって思ってました。」
篠原は俺の方を見ずに、小さな声でそう言った。
てか、何の話だ…?
「でも…さっきの先生を見て、私の考えは違ってたってわかりました。」
さっきの俺…
本性に近い俺のことか─
「俺が嘘付きだって?」
確かにそうだ…
でも、だから何だ?
篠原には関係ない。
俺が嘘を付こうが、ただの生徒である篠原に迷惑をかけることはない。
「…そうじゃなくて、」
「じゃあ何?」
危ない…
これ以上はダメだ─
篠原が何を考えてるかは知らないけど、これ以上俺に近付ける訳にはいかない。
「あのな…篠原。人間ってな、他人に見せてるものが全てとは限らないんだ。嘘付くなんて…当たり前なんだよ。」
最低呼ばわりされるのは、もう慣れたつもりだ。
俺は…悪人でいい。
「…素直でいたって、純粋でいたって、何の得もない。俺は知ってるから…人の狡さを。」