恋、涙 …
………!!
なぜ…
篠原が葉月のことを?
まずいことを聞いたと思っているのか、篠原は視線をいろんな所に泳がせる。
俺もどう答えたらいいのかがわからず、しばらく呆然としていた。
話した覚えはない。
調べようもないはずだ。
なのに…どうして?
「あの…やっぱりこれは聞かない方がよかったですね。わ、忘れて下さい!」
「…なんで知ってる?」
焦る篠原に、俺は視線を床に落としたまま、低い声で小さく呟いた。
「え…」
「答えろ、篠原!!」
俺が怒鳴ると、篠原は少し震えながら拳を握った。
「さっき…先生が寝てた時、寝言で葉月って言ったんです。それで…」
寝言…だと?
俺はもう『あいつ』のことなんか忘れたいのに…
「ごめんなさい…」
意味なく謝る篠原。
でも…
葉月のことを知られた─
それはちょっと…
考えものだな。
「篠原…今日はもう帰れ。」