恋、涙 …
俺はそう言いながら、なんで篠原を引き止めてしまったのかと後悔していた。
雨に濡らす訳にはいかないと、余計な心配をしたのが悪かった…
あそこで傘を貸すなりして、無理にでも帰しておくべきだったな。
そうしたら…
知られずに済んだのに─
「…失礼、します。」
篠原はそう言うと、ドアの方を向いて歩き出す。
ドアを開けて外に出ると、篠原は俺に向かって軽く頭を下げた。
閉まったドア。
1人になった俺。
廊下からは、篠原の帰っていく足音が聞こえた。
音からして…
走っていったんだろう。
「………!!」
篠原が帰った後、俺は部屋にある机を蹴り飛ばした。
悔しい─
夢だとはいえ…
『あいつ』を思い出したという、その事実は変わらない。
まだ…
俺は忘れられないのか?
葉月─
頼むから、消えてくれ。
翌日。
下位補習の時間。
篠原は…俺の前に姿を現すことはなかった─