恋、涙 …
中津は『そいつ』の方を向き、面倒くさそうに返事をした。
「何よ…せっかくタオル持って来てあげたのに!!あ…杉田先生、こんにちは。」
中津にタオルを投げつけ、ついでとばかりに俺に挨拶をした『そいつ』は…
篠原 希【シノハラ ノゾミ】
男子バスケ部のマネージャーだ。
篠原は、笑顔が明るいとバスケ部の生徒には人気な女子だ。
俺は一切興味なし。
まぁ…
あったら重症なんだが─
「杉田先生も一緒にやりますか?練習。」
「いや…いいよ。俺は見てるだけで充分だし…」
練習なんてしたくないし。
俺は熱血教師ではない。
笑顔で断ると、篠原は悲しそうな顔をして俺を見た。
「そっか…残念。」
「杉田が練習なんてする訳ねぇだろ?バカ希!」
中津がそう言ったのをきっかけに、二人は言い合いを始めた。
はぁ…面倒だな。
二人と少し距離を置き、俺は足元に転がっていたバスケットボールを手にした。