恋、涙 …
「…何が?」
恭平の言いたいことがわからず、俺は鞄を手にしながら聞き返した。
「藤村だよ。」
またその話か…
「今は付き合う気ない。藤村がどんだけ人気あるのかは知らないけど…」
そんなの俺の自由だ。
「まぁ、一真だからな…答えはわかってたけど♪」
恭平は笑顔でそう言うと、俺の肩を叩いた。
「あ〜、俺も一真みたいに告白されてぇ〜!!」
「…お前なぁ─」
俺にしては、そんな恭平が変に見えるのだが…
これが普通なんだろうな。
正直言って、この年齢で女子に興味ない奴は俺以外にあまりいないと思う。
「あっ…」
教室を出て体育館に行く途中、恭平が何かに気付いた。
「……………」
恭平が見ている方向を見ると、その先には藤村の姿があった。
あの時と同じようにホルンを持っている藤村は、楽譜を真剣に見ていた。