恋歌Heart
そんな噂を信じたヤツらは屋上に近寄らない。

教師達もだ。

だからいつだってあたしだけの場所だ。

屋上に着いて、ギターを弾く。

あたしだけの…空間が始まる。



「誰かを想って泣いた。誰かの為に泣いた。

初めてだった。人の為に泣くことが。

自分の為に泣いたことはない。

いつだって感情をごまかしてきたから。
いらない感情は捨てた。いらない想いも捨てた。


呆れるくらい誰かを憎んだこと、想ったこと…

あたしは今もひとり。心から信じることなんてなかった。

自分さえ、家族さえー…」


―ガタン―

屋上の扉が開いた。あたしはギターを隠した。

「よぉ、千景」


「…バカ教師」


こいつは噂を信じてないんだね。
あたしはため息をついた。


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