COLORS【黄】パープルA─黄昏の明日へ─
偶然と必然
 「いらっしゃいませ」

「また久しぶりになってしまったな」

「なんだ~翠ちゃんか」
藍に『翠ちゃん』と呼ばれている御方こそ、警視庁捜査一課の翠川警部、知る人ぞ知る偉い人物なのだ。
時々、この店に遊びに……もとい『任務』を警部直々に伝達に来てくれる。

「廉はまだ帰って来てないのか?」

時計を見れば午後八時を過ぎている。

「どうせどこかで油でも売ってるんでしょ。そろそろ閉店の準備しなきゃ」

「俺も手伝うよ」
高そうな背広を脱ぐとカウンターにそれを置いた。

「いいって!翠ちゃんは奥で座って休んでてよ。コーヒーでも入れるかさ!天下の警部様に手伝ってもらえるなんて、有り難いけどその代償が高く付きそうで」

「相変わらず鋭いな。まぁ、お前らに期待しているのは最もだけどな」

「今回も早速、任務でしょ」

「ああ、コーヒーブラックで頼む」
脱ぎ捨てた背広を手に取り肩に掛けると、彼は奥のリビングに進んで行った。

「はぁ~い」

藍はふぅと溜息をつく。
空を見上げると星が点々と輝いていた。

「それにしても……廉のヤツ!一体どこ行ったのよ!!片づけもまだだってのに!帰って来たら思いっきりとっちめてやるんだから!!」

握りしめられた右手の拳は怒りの鉄拳へと変化していたのだった。
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