COLORS【黄】パープルA─黄昏の明日へ─
「ただいま」

玄関の扉が開く。
現在の時刻は午後十時二十分。

「遅い!!どこ行ってたのよ!!」

やっぱり怒ってる、よな。

「ちょっと車のエンジンがトラブちゃってさ。あ~腹減ったなぁ」

「もうっっ!!廉っ!!そんな嘘ついても騙されないんだからね!!」

まるで蠅のようにうるさい藍を振り切り、台所へと向かう。

「誰か来てたのか?」

流し台に洗わずそのままになっていたコーヒーカップが二つ。
翠ちゃんかな?

「……さっきまで翠ちゃんが居たの。今回の任務のことでね」

「それはそれは、ご苦労なこって」

冷蔵庫を開けるがめぼしい食材は見つからない。
とりあえず麦茶を取って渇いた喉を潤すことにした。

「もういいわよ!!廉なんか知らない、任務も教えてやんない」

俺がそっけない態度を取りすぎて、どうやら藍の機嫌を完全に損ねてしまったようだ。

「分かったよ。悪かった、ごめん」

「最初からそういう態度に出ればこっちだって……。廉は『人魚の涙』って知ってる?」

にっ……人魚の涙――!

「きっ聞いたことはあるな」

「今回の仕事はその宝石を盗んだ犯人を捕まえること、なんだけど」


「……」
マジで言ってるのか?


「どうかしたの?」

「あの……さ。今回の任務、お前一人でやってくれないかな」

「なっ何よそれ!!ちょ、ちょっと!!廉!!廉ってばっ!!」


――パタン。
俺はバスルームに入ると扉に鍵をかけた。

どうしたら分からない状態ってきっと今の俺のことを言うだろう。

麻美が……麻美が『犯人』なんて――、
死んでも言えねぇよ。
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