COLORS【黄】パープルA─黄昏の明日へ─
「あれ?藍が居ない……」

バスルームを出てリビングを覗くが姿が見えない。
あいつの性格からして絶対に問いつめられるって思っていたんだけどなぁ。

予想外の展開に戸惑っていたのは俺の方だった。


コンコン……。


彼女の部屋の扉をノックする。

――応答はない。

普段は入るなと固くなに言われているんだが、ドアにも『立ち入り禁止』の文字。
今日はしょうがないよな。

そう己に言い聞かせて恐る恐るドアノブに手をかけた。


「藍……?」

部屋の中は真っ暗だった。

「寝ているのか?」

どうやらベットの上で伏せているようだ。
ここからでは眠っているのかまでは判別できない。

「藍?」

一歩一歩近づく。しかし一向に起きる気配はない。
やはり眠っているようだ。

「ごめん、俺……」

横たわる彼女の前で俺はもう一度謝っていた。
もちろん、それに対して返答があるハズもないのだが。


コチコチコチ……。
目覚まし時計の秒針がゆっくりと時を刻む。


「なんで謝るのよ?ばか」


「おっお前!!起きていたのか?」

「当たり前でしょ。ちょっと驚いた?」

彼女は起き上がると俺の方を見て悪戯っぽく微笑んだ。

「……ったく。お前が死んでなくてよかったよ」

「そうか!!その手があったか……もっとリアルに死んだフリしとけばよかったな」

「ばーかっ!なんでそんなことする必要が……」

「廉の本心が聞きたいから……私が死んだ時くらいは墓前で素直になってくれるかなって思っただけ」


俺の負けだって思った。


「……廉」

「もうバカなことするな。ちゃんと話すから」

俺は彼女を抱きしめていた。

このまま本当に消えてしまうんじゃないかって……、
消えるハズなんてないのにとても怖くて仕方なかった。
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