さよなら、もう一人のわたし (修正前)
第一章 出会い
「八番、平井京香です」


 あたしはそう言うと、頭を下げた。


 目の前に座っている男性の視線があたしに向けられる。


 そこはビルの一室だった。しかし、一室といっても会議で使われるのだろう。そのスペースは非常に広い。

 あたしの通っている高校の教室ほどの広さがあり、両サイドにあたしと彼らが向かい合うように座っている。

 
 その中の一人があたしの姿を睨むように見た。


 見られていると分かって、あたしの心臓は大きな音を立てて鳴り出した。


 あたしは前もって言おうとしたアピールポイントを言おうとしたが、上手く言葉が出てこない。


「君はどうしてこの映画に出たいの?」


 これはある映画の主演を決めるオーディションだった。一般公募をしていて、あたしは飛びつくように応募をしたのだ。


「女優に、なりたくて」


 あたしは自分の声が震えているのに気づく。


 こんなんではだめだと思いつつも、想像したように滑らかに言葉が出てこなかった。
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