さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「成宮さんは知らないかもしれないけど、二十年くらい前の映画をやっていた人で、高木水絵さんっていう人」


「高木水絵」


 千春はあたしを呆然と見つめていた。でも、彼女の表情はあたしが名前を挙げた人を知らないという表情ではなかった。


 まさかその名前が出てくるとは思わなかったとでもいいたそうな表情だった。


「あと、一人、仁科秋」


 今度は千春は突然笑い出した。


 彼女が一体何を考えているのかさっぱり分からない。


「あなた酔いセンスしているわ。仁科は正直どうかと思うけど」


「何で?」


 千春は肩をすくめて、ただ笑うだけだった。
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