さよなら、もう一人のわたし （修正前）
　彼の瞳にあたしの姿が映るのを確認したときに、自分が何を言ったか理解したのだ。

「もしかして口説いてるとか？」

　彼は笑いながら言った。

「違います」

　強い口調で否定してしまった。

　彼は肩を震わせて笑い出す。

　これでは動揺しているのがバレバレだった。よりによって彼に何でこんな変なことを聞いてしまったのかと思う。

　だいたい彼には彼女がいてもおかしくないのだ。

　そんなあたしの気持ちを打ち消すような言葉が聞こえてきた。

「彼女はいないよ」

「本当に？」

　ちょっと意外だった。この人なら女の子は放っておかないような気がしたからだ。

　しかし、千春も尚志も顔立ちが整っていることもあり、美的感覚が普通とずれていて、ちょっとやそっとじゃかわいいと思わないのかもしれない。
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