さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしは千春の笑顔を思い出していた。

 彼女は苦しんできたのだとも思った。

「そしたら千春にはこの話題は触れないほうがいいですね」

「君が触れる分には平気だと思うよ」

 尚志さんの表情が明るくなる。

「どうして?」

「あいつさ、君が始めて来た日、自分が今まで出ていた映像を見ていたんだ。不思議そうな顔をしながらね。『どうしてあの子はこんな演技が好きなのか』って苦笑いを浮かべていた。今まで一度もそんなことなかったのにね」

「だってあたし、彼女のファンだったから」

 彼は何かを納得したようだった。しかし、あたしには意味が分からない。

 彼はあたしの表情に気づいたのか二度頷くと、言葉を続ける。
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