さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしの夢を夢にしてくれたのは千春だった。だから、結果的に彼女に引導を渡されたと思うとすっきりした。

「君って父親いないよね?」

 尚志さんは思い出したように呟く。

「いませんよ。顔も知らないから」

「だよね? なら聞き間違いかな」

 尚志さんはすっきりとしないという表情を浮かべている。

「何か問題でも?」

 実際、断られるだろうから問題はないと思いつつ、一応尋ねてみる。

「千春が伯父さんに君は両親が揃っているって言っていたのを聞いたから」

「聞き間違いだと思いますよ。わざわざ千春が彼にそんなことを言う必要性もないし」

「そうだな」

 尚志さんは深く何かを考え込んだ様子で呟いた。
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