さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 早めに才能がないということが分かってよかったのだ。

 ずっと夢を追い続けていたら、年齢を重ねるに連れてリスクが増大してくるからだ。

 少なくともこれからは大学の受験に全力で取り組もう。

 そう言い聞かせても視界がぼやけてきたのだ。

 そのとき強い雨があたしの体を叩きつける。

 周囲で人の声が聞こえた。

 でもあたしは立ち尽くしたまま動けなかったのだ。

 雨で体を冷やされていく自分が惨めな存在になった気がしたのだ。

「京香さ…ん?」

 あたしはその声に顔を上げる。

 そこに立っていたのは尚志さんだった。

 あたしは慌てて涙を拭った。

 でもそんな仕草さえしなければ彼はあたしが泣いていることに気づかなかったかもしれない。それほど強い雨だったのだ。

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