さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「何もないって。そういえば伯父さんから聞いたよ。秋ちゃんのこと」

 千春の顔が引きつる。

「あのじじい」

「隠す必要はないからってさ」

「あたしにとっては黒歴史なんですが」

 彼女は肩を落とす。

 どうして彼女はそんなに知られたくないのだろう。

「誰にも言わないよ。でも、これで諦められると思う」

 あたしの中で水絵さんになりたいという気持ちがあった。

 でも、敵わない存在を見せ付けられることで、心がすっとした気がする。彼が彼女の話題を出すことで、あたしに無理だと告げたかったのだろうと思ったからだ。

「あーもう、絶対に言わないでよね。あんな誰も覚えていないようなことを知られたくないのだから。それに諦める必要なんて」
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