さよなら、もう一人のわたし （修正前）
　あたしは息を吸い込む。勇気を出して言葉を発した。

「あの、一緒に行きませんか？」

　驚いたような声が受話器の向こうから聞こえてきた。

「別に行きたくないからなあ。千春と一緒に行けば？　あいつに渡して」

　そのとき突然電話が切れた。

　あたしは通話時間の表示された携帯の液晶画面を見る。

「切れちゃった」

　千春にあんな感じで言われたからだろうか。

　どこか尚志さんは断らないものと思っていただけにちょっとショックだった。

　でも落ち着いて考えたら断られても仕方ないとは思う。

　あたしの携帯に電話がかかってきた。

　発信者は千春だった。

「もしもし、ごめんね。バカな兄が変なこと言って。今度の日曜日の十時にそこで待ち合わせでいい？」

　千春が強引に兄を説き伏せたのだろうか。尚志さんに悪い気がしてきた。
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