さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「無理に行かなくても。一人で行ってくるよ。気にしないで」

「そんなこといって京香に何かあったらどうするのよ」

 千春の声が少し小さくなる。受話器から口を遠ざけたのだろうか。

「知らない男にナンパされたりするかもしれないでしょう」

「断るから大丈夫だよ」

 しかし、千春があたしの話を聞いているか疑わしい。

「いいってさ。だからお願い」

「うん。分かった」

 何となく拒めなかった。でも、尚志さんには迷惑をかけてしまったかもしれない。

 そう思うと、罪悪感でいっぱいになった。
< 119 / 577 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop