さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「人の気持ちって」

「君が誘ってくれたのに、そういうときに他の人の名前を出すのは失礼だろってさ」

 千春らしい言葉かもしれない。

「でも迷惑だったらかまいませんよ。別の場所でもいいし」

「普段出歩かないから遊ぶ場所も知らないし、よく分からないかな」

「そうなんですね」

 ちょっと意外な気はした。

 あたしをからかっていた彼の印象と今日の彼の印象は別人のようだった。

 それほど千春に強く説教をされたと考えられるのかもしれない。

「チケットを無駄にしてしまったら悪いからここに入りましょう」

 あたしは尚志さんの手をつかんだ。

「そうだな」

 千春はこのチケットをどうしたのだろうか。

 そう思うと少し不思議だった。
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