さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 歓迎されているようには見えなかった。

「愚かな兄のために妹が見つけてきてやったのよ」

 千春が空気が読めていないのか、軽快な口調で語りだす。

 私は千春の口を押さえたい気分だった。

「ね、いいでしょう?」

 彼は千春の言葉に頷く。そして、あたしに近寄ってきた。あたしの手を掴む。あたしは手を振り払いたかったが、払えない。彼の力が強かったのと、彼の視線があまりに真っ直ぐだったからだ。

「君の名前は」

 優しい声だった。

「平井京香ですけど」

「君、女優になりたいんだよね。演技経験は?」

「学園祭でならあるよね。昨年主演していたし」

 と、私の代わりに答えたのは千春だった。

「どうしてあなたが知っているのよ?」

「下調べは必須でしょう?」
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