さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしは千春の家に寄る。彼女の家は夏に来たときと何も変わらないようなのに、別の家のように感じた。

「尚志さんは?」

「部屋にいるんじゃない? だらけてばかりだからね」

 彼女はテーブルの上に置いてある白い冊子をあたしに渡す。それは脚本だった。

「できたの?」

 あたしは中身を確認する。それはあたしが今までに見たものとは違う気がしたのだ。

「それね、部分的に修正したの。まだ完成形じゃないけど早めに読みたいでしょう? 伯父さんに借りてきた」

「ありがとう」

 そのとき階段のきしむような音が聞こえてきた。そして、リビングの扉が開く。

 そこに立っていたのは尚志さんだった。

「あ」

 彼はあたしと目が合うと、そのまま出て行こうとした。
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