さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「お兄ちゃん、京香を送っていってよ。もう暗いし危ないでしょう?」

「いいよ。一人で帰れるから」

 今、彼があたしを見て避けたのは分かった。

 それが彼の答えなのだと思ったのだ。

 尚志さんは背を向けたまま動かない。

「お兄ちゃんたら」

 いつもと反応が違う兄の態度に戸惑ったのだろう。千春は強い口調でそう告げた。

「分かった。送っていくよ」

 彼はそのままあたしを見ないで玄関まで行く。

「じゃあね」

 あたしはそれを鞄の中に入れると、千春に別れを告げた。

 尚志さんはもう玄関にはいなかった。

 あたしは靴を履くと、そのまま外に出る。

 尚志さんは門の外にいた。

 彼はあたしを一瞥すると、そのまま歩き出す。
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