さよなら、もう一人のわたし （修正前）
第十一章　大学
　高校三年になった。尚志さんとはあれ以来一度も会っていなかった。

　もし、あの話がなければ一緒に初詣に行ったり、クリスマスを祝ったりすることができたのではないか。そんな願望のこもった気持ちを抱いていた。

　千春は意図的に尚志さんの話題には触れないようにしているようだった。

　多分、尚志さんがあたしに会うことを嫌がっているのだろう。

　そんな気がしたのだ。

「成宮さんのお兄さんってどんな人か知っている？」

　あたしはそんな問いかけに思わず噴き出しそうになってしまった。あたしにそんなことを聞いてきたのは武田弘だった。

「何で？」

　あたしは頬杖をついたまま彼に返事をした。

　彼が尚志さんのことを言い出すのが意外だった。

　尚志さんのことは千春からでも聞いたのだろう。
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