さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 千春は断るのではないかと思ったからだ。

 こういうとき友達としてどう言えばいいのか分からなくなる。

 弘はいい人だとは思う。

 でも千春の好みに合致するかは分からなかったからだ。

 千春は自分が好きでない人とはつきあわないだろうとは思ったからだ。

「でも、話せる機会はあるんじゃない? それなりにね」

 街中で偶然会うことを望むよりははるかに高い確率だろう。

「今日、学校帰りに大学でも見てこようかな」

「は?」

 あたしは弘の言葉に思わず大きな声を上げた。

「いや、来年通うかもしれないキャンバスを一目見てこようかなと思ってさ。志気を高めるために」

「そんなのより千春の写真でも手に入れたほうがやる気が出そうだよね。弘の場合は」

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