さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 総合大学だけあって高校とは比べ物にならないほどの広さだった。それぞれの建物の形は違うものの、似たような景色が広がっている。

 あたしが辺りを見渡していると、弘が腕をつかんだ。

「あまりきょろきょろするなよ」

「だって、面白くて。迷子になっちゃいそうなくらい広いね」

「動き回るなよ」

 彼は肩をすくめながら言った。

「分かっているって」

 そうは言ったものの、一人でこなくてよかった。

 一人で来たら迷うことは確実だった。

「喉渇かね?」

 弘が少し古ぼけた校舎の前を通りかかったときにそう口にした。

 辺りには植木などが広がっていて、緑が多い。

「そうだね」

 そう言われると、喉が渇きを覚えているような気がしてくるから不思議だ。

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