さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「やだ、成宮くんたら」

 その名前にあたしは反応する。

 よくある苗字ではなかった。

 低い、あたしの心にダイレクトに届く笑い声が聞こえた。

 その声を聞き、あたしの胸がどくんと鳴った。

 胸が苦しくなる。

 すぐに振り向いて彼の姿を確認したい。

 でも、できなかった。

 振り向いて、目が合って彼だったらどうするのだろう。

 彼が万が一あたしに気づいて、迷惑そうに眉間にしわを寄せた顔で見たら、あたしはどうするのだろう。

 そう思うと、あたしの体は動かなかった。

 体が石のように固まってしまった。そんな感じだったのだ。


 少しずつ話し声が遠ざかっていく。

 その声を聞きながら、目に涙が溢れるのが分かった。

 あたしは唇を噛み締める。
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