さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 誰と話をしているのだろう。

 彼の彼女なのだろうか。

 それともただの同期生なのだろうか。

 彼は彼女のことをどう思っているのだろうか。

 彼女は彼のことをどう思っているのだろうか。

 絶対に聞くことができない問いかけを心の中で延々と繰り返す。

 あたしはその声が遠ざかるのを確認して振り返る。

 彼の後姿を見て、あたしの胸がずきんと痛んだ。

 彼と一緒にいたのは、髪の毛を短く切った女の人だった。

 あたしよりも背が高く、スタイルのよい人だった。

 彼は楽しそうに笑っているだろう。顔を見てもいないのにそう思っていた。

 彼らが角を曲がる。あたしの座っている場所から、二人の表情を確認できた。
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