さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 彼はあたしの予想通り笑っていた。

 楽しそうな、幸せそうな笑みだった。

 あたしに出会った頃は見せてくれた、でも今は絶対に見せてくれないような気がする笑顔だった。

 あたしの心が痛む。

 あたしは彼に避けられながら、それでも心のどこかで自惚れていたのだ。

 家を出るのが面倒だと言っていた彼があたしと一緒にいろんなところに出かけてくれて、あたしを家まで送り迎えしてくれる。

 だからそんな彼の笑顔を見られるのはあたし以外は千春しかいないと思っていた。でも、それは違ったのだ。

 そんな当たり前のことに気づき、胸が苦しくなってきた。

 あたしの瞳から涙がこぼれてくる。

 一度涙がこぼれると、その涙の量は次第に増えていく。

 でも、声を出さないように、声を押し殺していた。

 その代わり涙の量は増え続けていた。

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