さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 互いに恋愛感情を持っていたことは一度もない。

 あたしにとって彼は何でも話せる人だった。

 彼に話しても、絶対に誰にも話さない。

 そう思わせる人だった。

 あたしたちが話すきっかけになったのはあたしが入学初日に筆記具を忘れ、隣の席だった彼が貸してくれたことだった。

 それからたまに話をするようになり、彼が嘘をつけない人だということを知った。

 どろどろした人間関係が苦手だったあたしの心に友達として入り込んできたのが彼だったのだ。

 他の女の子よりも彼と話をするのが気楽だったのだ。

 男女の友情なんてないと言う人もいるけれど、あたしと彼の間には友情が存在していた。

 あたしは紅茶に口をつける。

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