さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「成宮さんのお兄さん? お前は随分高望みなんだな。身の程知らずってやつ?」

「あんたも同じでしょう?」

 彼は「そりゃそうだな」と言って笑い出す。

「で、さっき、彼が女の人と一緒に歩いているのを見たら何か悲しくなってしまって」

「それって彼女?」

「分からない」

「それなら別に悲しむ必要なんて」

 あたしは映画の出演が決まってから、彼が話をしてくれなかったことを話した。

 あたしは人にいろいろ話をするのは苦手だった。できるだけ誤解を招かないように丁寧に話をした。

 彼みたいなタイプに中途半端に話すと、暴走する可能性があったからだ。

「それって酷くないか?」

「どうなんだろうね。好きでもない人と一緒に出かけるのが面倒になってしまったという可能性もあるから」

 彼は不満そうに唇を尖らせた。

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