さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 尚志さんはあまりそのことには積極的に加担しない気がした。だから千春がそうしているのだろう、と思っていた。

 もちろん、千春が手伝えることなんてほんの一部だろうけど。彼女も合格ラインより上にいるとはいえ、一応受験生なのだ。

「映画かあ。でも実感ないよな」

 弘はあたしの顔をまじまじと見つめる。

「もちろん見に行くけどさ、お前がスクリーンに映っていたら笑っちゃうかも」

 彼は冗談めかしたような言葉を並べる。

 あたしは思わず笑ってしまった。

「他のお客さんに迷惑かけないように笑ってね。でも千春と一緒に行くと笑えないかもね」

「それは勘弁。映画の内容どころじゃなくなるって」

 あたしは笑っていた。

 苦笑いを浮かべていた弘が急に真顔になる。
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