さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 さっき千春が恋愛云々といっていたことが頭に残っていたのだろう。

「あなたが好きだと言っていたあの人は?」

 すると、千春の目が輝き、頬がほんのりと赤くなっていく。

「何を言うのよ。突然。でも、成績は私より悪かったよ」

 千春が私を見て、笑顔を浮かべる。でも、頬は赤いままだった。何か嬉しいことがあったのだと思う。

「彼が勉強を教えてくれって。このままじゃ高校が志望校に行けないからって」

 彼女の目は輝いていた。先ほどまでけだるそうな表情を浮かべていたあの子とは全く別人のように見えた。

 彼女は自分で作り出した物語の少女になりきっているのだ。

「良かったね」

 千春は満面の笑みを浮かべていた。

「そろそろ終わり」

 千春の兄が両手を叩いた。千春のキラキラとした目の輝きがなくなり、ちょっと冷めた感じの目に戻る。
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