さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしは笑うのを止めて彼を見た。

「お前が貸してくれたあれを一応見たよ」

「どうだった?」

 弘が見たいと言い出したので一応貸しておいたのだ。

 それが昨日のことなので、こんなに早く見てくれるとは思わなかった。

「あの主演の女優って似ているよな……?」

 弘は顔を赤らめながら言った。

 あたしから目をそらし、どこか恥ずかしそうだった。

 千春に、と言いたいのだろう。

 弘は千春の母親のことは知らない。

「気になるなら千春に聞いてね。あたしからは何も言えない」

「無理。いろいろ詮索しているみたいに思われたくないし」

 彼は自分のコーヒーに手を伸ばし、一口だけ口に含んだ。食器のこすれるような高い音が響く。

「それに今の言葉で何となく分かったからいいよ」

 あたしは苦笑いを浮かべた。

 弘は肩をすくめると言葉を続ける。

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