さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 受験生なら自分の勉強を最優先にしたいはずだ。

 あたしのための可能性もなくはないが、彼女はとにかく熱心だった。

 稽古の相手もしてくれている。

 尚志さんが何もしないのをカバーするかのように、千春一人があたしの相手をしてくれていた。

 もちろん、それをできるのは千春か成宮秀樹の二人だけだろう。

 だから、手が比較的空いている千春が練習につきあっていただけかもしれない。

 それでも他に何か目的があるのではないかと思えたのだ。

 もし純粋にあたしのためにしてくれているなら、彼女には申し訳ない憶測をたててしまっていることになるだろう。

 千春にこの映画に出てもあたしにとっていい経験にはなるかもしれないし、誰かの目にとまる可能性があるかもしれないとは言われた。

 しかし、この映画に出たからといってまず大スターに駆け上がれるわけでもない。

 一気にスターになりたいなら大手の事務所に入ったほうがいいとも言われた。

 でもあたしは女優になりたかったのだ。
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