さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 春独特のぬくもりのある空気があたしの肌に触れる。

 暑くも不快感もないこの空気はなんだか好きだった。

 この時期は人が眠りを感じるということが分からなくもない。

「どこで会うの?」

「近くまで来てくれているはず」

 千春の後をついていく。

 彼女の足が少し古ぼけた飲食店の前で止った。

 そこには特製オムライスという看板がかけられていた。

 ここのオムライスはそんなにおいしいのだろうか。

 あたしは看板を見ながらそんなことを考える。

 あたしたちが店の中に入ると、鈴の音が店内に響き渡る。

 千春は店の店主らしき若い女性に手を振ると、奥に入っていく。

 店の中は明かりの量を徹底的に落としているのだろう。

 窓から差し込む太陽の光が店内を照らし出していた。

 その光がちょっと幻想的に見えた。
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